標準語を話す男の悲劇

「いいかい?世の中には、絶対的なものなんか存在しないんだ。人間の営みなんて…えー、それは総じてメタファーほどの意味しか持たないんだ。うん、有名な作家もそう言ってる。んーわかってくれるかなあ。たとえば君が買い物に行くとするだろ?行き先はどこでもいいんだけど、大好きなセレクトショップとか。そこで君は束の間のショッピングを楽しむ。自分に似合うであろう、且つ自分が本当に欲しい服を探すんだ。小奇麗な店員との会話も楽しみながらね。もしかしたら、そのショップで服を物色している自分自身に、んーなんていうかな、君は何とも言えない優越感を感じるかもしれない。私はこんなショップでなきゃ服を買わないオシャレな女なのよって。もちろんそれは君の自由だ。誰もそれを咎めることなんて出来ないんじゃないかな。で、この時点で君は、自分は自分の主観的な趣向によってショッピングを楽しんでいるって思うだろ?でも違うんだなー。それは君の中で完結してるだけの行為であって、それを見ている人にとってはそれが別の意味を帯びちゃうことだってあるんだよ。そういうことってあるんだよ。そういうこと。うん、俺の言いたいことはそういうこと。ごめんね、一気に喋っちゃって。人間の営みなんて大袈裟なこと言っちゃったけど、その、つまり、その中でも俺は男女の関係について話したいんだよ。原罪って知ってる?その昔アダムとイブはね…」





「原罪は知ってんねんけど、私、標準語喋る男って苦手やねん、じゃあね」





静かな初春の午後、大学の学食で聞こえてきた男女の会話です。彼が彼女に嫌われた理由はもっと別のところにあるような気がしました。



今日のBGM
君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命/銀杏BOYZ

君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命/銀杏BOYZ

取りあえず全曲好きなんですが、特に大好きな楽曲は「Skool Kill」「あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す」「もしも君が泣くならば」「駆け抜けて性春」「Baby Baby」かな。「あの娘に〜」の歌詞に酷くシンパシーを感じてしまう自分にちょっと戸惑ってしまうわけですが…。今日は「駆け抜けて性春」のYUKIのパートがとても切なく響きました。